扉絵変遷
先日大阪アニメーションスクールの特別講義に参加させて頂きました。
漫画とイラスト両方兼ねた、扉絵の課題を考えました。
見本&悪い例として、自分の投稿作や仕事の原稿をいくつか持って行きました。
そのうちの一部をここに載せてみます。


これは投稿2作目、選外Cクラス(漫画にすらなっていないレベル)の扉絵。
キャラがいない!(笑)
こんなに下手なのによく漫画家諦めなかったと思う…。


投稿4作目、もう一歩賞。奇跡の2ランクアップ。
物悲しい話でもキャラを前面に出した方が良いらしいと気付いた頃。
自分の絵を少女漫画風の絵柄に改造し、なんとか雑誌に合わせる事が出来てきた。
大学の漫研で漫画用のインクの存在を知ったり、トーンは錆びたカッターでは削れないと知ったりして、漫研で部誌用漫画を年2作描いてきたおかげで選外脱出レベルになれました。
漫研の皆さん本当に有り難う。


デビュー後1作目の読み切り。
デビューしたら出来るだけ早く連載作家にならないとその先の活動が厳しくなる事は分かっていたので、とても描き込みの多い原稿を描いていました。
というのも、私は暫くの間オリジナル作品を描く事を認めてもらえなかったので、漫画の中で自己表現が出来る部分が絵しかありませんでした。
そんな中で何か自分だけの表現をしようとすると、雑誌の中でずば抜けて細かい絵を描く事しか出来なかったのです。
当時少女漫画界では殆どデジタルが普及していなかった中、魔法陣はパソコンで作りました。

特別講義の生徒さんは約20人でしたが、私が描いた漫画をリアルタイムで読んでた方が何人もいらっしゃって驚きました。
連載までの読み切りの扉絵を並べながら、内容に納得がいっていないので絵で頑張ろうとして細かくなったという解説をしていたら、好きだったのにと言って下さった方がいました。
私はオリジナルが描けなくても読者の心の栄養になるものや二番煎じでないものなら喜んでやりたいですが、当時雑誌ではエロ要素を増やそうとしていて、私に用意されたシナリオが絶句する様なビッチなものでした。
こんなの子供に与えたく無いし自分の名前で発表出来ないと思い、自分なりに変更案を書いて提出したら、エロを描くのが嫌なら掲載枠を取り消すと言われました。
連載権のかかっていた読み切り枠で、これを放棄したら次は無い感じがしました。
過去のヒット作の繰り返しにならない様に新しい要素を入れた方が良い、刺激を与えるだけの漫画より中身を大事にする漫画を発表したい、大人が子供に読ませたく無いと思うものはやらない方が良い、という事を訴えても、割り切って描くものだとか職業漫画家になれと言われるだけでした。
そんな中でも私は出来るだけ酷い作品にならない様に、大幅な変更は通らなくても可能な限り改善しようと努めました。

読者さんが読んで下さったのは発表後の作品のみです。
どのような事情と変遷で作品が出来上がったのかは作り手側しか知りません。
その作品は度々、印象に残っているとか好きだったと言ってもらえる事があるのですが、私にははじめのビッチな内容や枠を取り消すと言われた事等、辛い記憶しかありません。
でも、完成した作品だけを見た読者さんに好きだったと思ってもらえたという事は、あの時酷い作品にならない様にもがいた甲斐があったのだと思いました。
漫画家になれば皆こんな目に遭うわけではなく、これはとても特殊な例だと思います。
デビューから最短で連載作家を目指すか、自分らしい作品が描ける機会を何年も何十年も待って納得がいく作品だけを描いていくか、どちらが良いのか私にも結論は出せません。


「僕のショパン」の原稿。
上のCクラスみたいな背景しか描けなくても、根気さえあれば数年でこれくらいにはなれます。
なので現時点で私のCクラスの原稿よりマシな絵が描ける方は確実に漫画家になれる筈!
漫画は速く描けば描く程稼げるので、この様な緻密な原稿を描こうとすると時給換算で2〜300円になってしまいますし、身も心も非常に消耗します。
でも初のオリジナル連載という意気込みと、ショパンと音楽家達への尊敬と愛情から、私はこの作品に時間が許す限り限界まで手を入れました。
まだ誰も描いていないジャンルの作品を描くのはとても厳しいですが、今まで無かったものを仕事に結びつけて頂けた事、自分にしか描けないものが描けた事はかけがえのない有意義なものでした。

以前私のオリジナル案は全て「前例が無い」という理由で没になりました。
そう言われるのは当然というか…そもそも、まだ無いものや自分にしか出来ない事をしたくてクリエイターを目指したのです。
講義やイベントに呼んで頂いた時はほぼ必ず、何故漫画家になりたいと思ったか、という質問に答える事になりますが、私はいつも「作品でしか表現出来ない事があるから」と答えています。
絵を描くのが好きとか漫画が描きたいから等とは答えません。
どんな原稿も描くのは大変なので身を削らなければ描けませんが、魂からわき上がるものをネームや原稿に表現していくのと、気持ちの重ならない原稿を作業的に描くのは私には全く別物でした。
でもこれは私個人の意見であり、目的もやりがいも色んなタイプの漫画家がいますし、原稿を描いていれば幸せというタイプの方が仕事としてはやりやすいから人によってはその方がいいかもしれません。
…さて最近また前例の無い事が起こって、思わず「前例があるより良いじゃない」と言いそうになってしまいました。

昨日今月の絵仕事が終わりました。10〜11月もイラストの仕事を予定してます。
イラスト仕事は今の所、徹夜も無く、12時間以上働く事も無く、毎日風呂に入れて、1日2〜3食食事出来て、それほど無理無く人間らしい暮らしの中で出来ています。
漫画は毎回瀕死になってだんだん体が持たなくなってしまうので、漫画もこれくらいで描ける様になりたいと切実に思います。
[2014/09/30 00:00] | 白黒 | page top
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