フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか

フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)
(2013/12/14)
浦久 俊彦

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珍しくリスト本の新刊が出ている!と、購入してみたら大正解だった本。
…それを超えて感動でした。買って良かった。僕ショパの読者さんにもお勧めです。

この本はリスト著「ショパン」に感銘を受けた事が執筆のきっかけで、リストが理解されない理由を探り、後世で歪められたリスト像やリストとショパンの人間関係の本質を追求しています。
そう、私が「僕のショパン」を描きたいと思った理由と同じなのです!
こういう本が出るなんてとても嬉しい!

私も21世紀になってもリストが誤解され続ける事、ショパンと並べて語られる時にリストが間違った貶められ方をされる事に疑問を感じていました。
ショパンについての素晴らしい本・解説でも、その中に出てくるリストの記述が偏見だらけという悲しい事態を何度も目にした事があります。
ショパンとリストの友情についても、とても魅力的なエピソードが満載の複雑で絶妙な友情なのに、今まであまり顧みられる事が無かったのが不思議なくらいです。
私はそれを自分の作品で解決したいと思い、僕のショパンを描きました。
この本も同じ方向性で書かれていて、非常に共感しながら、面白くて一気に読んでしまいました。
そして涙を誘う文ではないのに泣けてきました。
後世の歪められた偏見を信じきってしまっている人から私の再発見を否定されたり、本当に好きで描いているのに商魂だと誤解されたりした事が思い出され、リスト像とショパンとリストの関係をちゃんと捉えようとしている本が出た嬉しさと、芸術家への誤解が消えるのはいつになるのだろうという辛さで一杯になりました。
人への批判は自分を表すものだと思います。
リストがショパンの伝記を書いた事を、博学をひけらかす為だとか、ショパンの名前を利用して利益を得ようとしているとかいう批判がありますが、そう批判した人こそが本を創る事を利己的なひけらかしとしか考えていないのです。
僕のショパンを毎月8P描くのは日常的なものしか出てこない漫画を40P描くのよりも大変でした。
楽して稼ごうと思っていたらこの題材は選ばないです。本当に好きでないとここまで出来ません。

この本には僕のショパンで描いたエピソードも沢山出てきて楽しいです。
ワーグナーを「オレ様」と書いていたり、僕ショパのキャラのイメージでも違和感無く読めます。
ショパンやリストが活躍した19世紀のサロンについて分かりやすく解説されていたり、外国の文献を多数参考に書かれているので、入門にもなりますし、深く知る事も出来ると思います。
ほかにもリスト著「ショパン」にまつわる面白いネタが書いてありました。
ショパンの親友(でパシられていた)ユリアンがショパンの死後伝記を書こうとしたのに、超人的な行動力のリストが先にショパンの伝記を書いてしまい、拗ねたユリアンがリストのショパン本のタイトルを「リスト化されたショパン」と書き直したそうです。
ショパン側の人間に嫌われてしまうリストの運命は19世紀〜現代に共通しているのかも…。
結局ほかの友人も誰一人ショパンの伝記を書かなかったそうです。
僕ショパでも引用しましたが、一流芸術家リストによるあんな凄い表現力のショパンの伝記を見てしまったら、あれを超えるものは中々書けないですよね。
リストは自らのショパン愛に忠実に、本を書いたり曲を演奏して広めたりしていたと思いますが、どれも凄いのでショパンを独り占め状態になってしまっていたのでしょう。
ショパンに関する事を全部リストに取られた!と悔しがるショパンファンがいたかもですね。

この本の元になったリスト著「ショパン」、作者さんはなんと1852年にパリで発行された初版を30年以上探して手に入れたそうです。
私はショパンの漫画の企画が全く相手にされなかったり興味を持ってもらえても没になったりして、諦めるしか無いのかと思っていた時、リスト著「ショパン」の日本語版を古書店で見つける事が出来、絶望の中でかすかな希望に包まれました。
その希望が的中したのか、その3ヶ月後に編集さんに声をかけて頂いて連載が実現しました。
今回、改めてリスト著「ショパン」はショパンとリストを追求する上で決して外せない本だと実感しました。
リストとショパンの言葉や彼らの生き方は時代を超えて人の心を動かす力があると思います。
日本語版は昭和24年以降発行されていませんが、新装版が出る事を願ってやみません。
[2014/01/03 00:00] | 音楽家語り | page top
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