ショパンとリストのおすすめ入門書
ショパンとリストについて検索しようとすると「合鍵」が表示される程、2人の関係が注目される様になってきました。
ショパンとリストについてもっと詳しく知りたい!何か専門書を読んでみたいけどどの本から読めばいいの?と思っている方もいらっしゃると思います。
初めて読む伝記本として最もおすすめなのが「パリのヴィルトゥオーゾたち」です。


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昨年改訂版が出た事に気付き、amazonでは旧版よりページ数が増えていたので出版社に問い合わせてみたら、ページ数は変更無く、誤植が訂正されたり注釈が増えたとの事でした。

伝記本や専門書は1人の人物について後世で書かれているものが多いです。
それに対してこの本の特徴は、
・ショパンとリストと実際にパリで交流してピアノを習ったレンツという同時代人が書いている事
・ショパンとリストの生き生きとしたセリフや仕草が記録されている事
・ショパンとリストの絶妙な人間関係が読み取れる事
にあります。

そしてなんといっても内容が面白いのです。
ショパンとリストの人間的な魅力が凄く伝わってきます。
ショパンとリストがお互いを理解し合った以心伝心の関係に見えるエピソードや、ショパンがリストについて嬉しげに話す事もあれば、レンツがリストの話をした途端にショパンがむうっとしたりと、予測不可能な揺れ動くショパンの心境が興味深いです。
著者レンツはかなりのチャレンジャーで、ショパンとリストという二大芸術家の前で大胆な発言や行動をしたり、失言した!と焦りながらも、2人に気に入られて交流を深めていくのが凄いし羨ましいです。

リストは見た目はクールながらも情熱と知性の塊で、スーパースターにも関わらず一市民のレンツに親切で寛大。
でも生まれながらのイケメンでヨーロパ1の天才として生きてきた人にしか出来ない雰囲気が、セリフや行動から滲み出ているのが見て取れます。
良い意味での無自覚ナルシストという感じです。
リストの母が、リストが新しい曲に感動すると動揺して疲れてしまう、と心配する微笑ましい様子から、リストが一人っ子として大事に育てられてるのが伝わってきます。

ショパンと言えば現代ではポーランドを代表する偉人ですが、同時代人の記録を見ると、あまりにも女性扱いされている事に驚かされます。

レンツはショパンに初めて会った時、ショパンの愛嬌に驚く。

次第にレンツ「ショパンはどんな代償を払っても喜ばせたい女性」に思えてくる。

終盤のレンツ「ショパンはリストの対等な妻」。

何故、「喜ばせたい友人」「対等な友」と書かなかったのか。
何故、何度もショパンを女性に例えるのか!

レンツがショパンを女性に例えたりリスショパ夫婦妄想をするのを見ると、レンツって腐男子!?と思いたくなりますが、多分そうではありません。
これは一般人のレンツを腐男子化させる程ショパンが可愛かった事を意味しているのでしょう。

ショパンが可愛すぎるせいで腐男子化してしまった人はレンツだけではありません。
リストもその一人です。
リストと言えば女性との噂が絶えないモテ男。
普段は決して腐男子ではない男の中の男であるリスト様が、ショパンがサンドと付き合う事になった時、サンドの激しすぎる愛でショパンが壊されてしまうのを危惧してその妄想を美しく官能的な文章で、著書「ショパン」に書き残しています。
実はショパンがサンドと付き合う事になった時、ほかの友人たちもショパン総受け妄想を書き残しています。
誰一人ショパンが男なのにという疑問を呈さず、当然の様にショパンを総受け扱いしている様子は、現代人の理解を超えます。
ショパン…一体どれだけ可愛かったのか…。

話戻って、ほかにもレンツはショパンを尊敬しながらも、パリジャンか!女々しい!と心の中でツッコミまくりです。
そしてショパンのあらゆる仕草と表情の美しさに見とれています。
ショパンがマイアベーアにマジ切れした時は激昂した顔の美しさに見とれ、ショパンがサンドの前でうろたえるのを見た時は「ショパンがひらひら舞っていた」と書いています。
30男のうろたえる姿がこんなに美しく描写される事があるでしょうか!
ショパンのうろたえる姿はよっぽど軽やかで美しかったのだろうと思います。
ショパンがサンドの前で威厳が無い事をリストとレンツは「可哀想」と言っているのですが、ショパンは守られる側が性に合うタイプだと思うので、ショパン自身はその状態を嘆いてなさそうだと思います。

ショパンのリストに対する名台詞「リストはどこにでも爪跡を残すんだから」はこの本が元です。
リストは繊細な花びらに触れる様にショパンに接してきたのに、ショパンはリストの言動を爪跡として感じていたからこそ出たセリフだと思います。
リストのどんな言動がショパンにとって爪跡だったのか気になりますね。
ショパンのマッチョ好きがレンツに知られていたというのもこの本からの発見です。
「僕のショパン」でこの本は情報源として大変役立ちました。
2巻にレンツの回が収録されています。おまけページにもレンツネタを描いています。
史実のセリフだけでなく、リストの視線の投げ掛け方やショパンのリアクションの仕方等、仕草や表情もレンツの書き残した情報をふんだんに盛り込んで、よりリアルにショパンとリストを描き出そうと試みました。

「パリのヴィルトゥオーゾたち」には興味深いエピソードのほかに、リストが書いたショパンの演奏会評や、レンツがショパンやリストに習ったり議論した楽譜の譜面なども収録されています。
19世紀のパリの社会や人々の様子、当時のフランス・ドイツ・イギリスの違い等も感じ取れます。
ショパンとリストに関する読みやすい専門書として、そしてリストの格好良さとショパンの可愛さにレンツと一緒にドキドキしながら19世紀パリの音楽界を体験できる本として、「パリのヴィルトゥオーゾたち」はおすすめです。
[2017/06/04 00:00] | 音楽家語り | page top
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